難関大学の入試で出題される英語が、以前と比べてかなり難しくなっています。実際にデータをみると、保護者世代の入試問題と比較した場合、出題語数は概ね2倍から3倍に増加し、しかも語彙の難易度も上昇する傾向にあります。保護者世代の大学入試対策では、全く歯が立たないほど入試英語が難しくなっていると言えます。高い関心を集める4技能型入試導入の是非とは全く無関係に、実態として入試で出題される英語は着実に難化を続けてきました。

以前であれば、付け焼き刃の受験英語対策でなんとかなったかもしれません。しかし現代の大学入試を念頭に準備するためには、本格的な英語運用能力を身につける必要があります。そして、これこそが最良の受験対策なのです。

東京大学

平成元年(1989) vs. 平成31年 (2019)

ここでは順を追って、東京大学、早稲田大学政治経済学部、センター試験で出題される入試問題の難易度を分析します。まず東京大学の入試問題を検討しましょう。語彙難易度の分類には、テキスト・インスペクター(Text Inspector) を用いました。テキスト・インスペクター (以下TI)は語彙難易度の目安として、CEFR指標と紐付けて分類してくれるので便利です。
A1は日本の中学校で習う必須語を中心としており、これが入試問題でどの程度を占めるかが一つの有益な指標となります。またB2までの単語を作文で使いこなし、部分的にでも話すことが出来れば、概ね英検準1級程度の英語力だと考えることが出来ます。        

試験(年度) 東京大学(1989) 東京大学(2019)
試験時間 120分 120分
欄外 6.3% 7.7%
C2 0.5% 1.2%
C1 0.8% 1.4%
B2 4.4% 7.7%
B1 6.6% 10.5%
A2 12.5% 13.1%
A1 69.0% 58.3%
A 1 – B2 累積比率 92.4% 89.7%
総単語数 2,330 5,031
試験時間1分あたり語数 19.4 41.9
注: テキスト・インスペクターによる分類

東京大学入試で出題される英語の語数は、平成元年から平成31年までの間に、2倍以上に増加しました。なお、ここではリスニング試験での放送回数を無視し、単純に一度読む、一度聴くという前提で全体の語数を比較しています。東京大学では昭和63年度(1988年)からリスニング問題を出題しています。放送される台本の語数も増加し、内容も難しくなってきています。和文英訳や自由英作文で要求される語数が増えただけでなく、自分で内容を一から構想しなければならないタイプの出題が増えています。

出題語数が増加しただけでなく、目を引くのは単語の難易度が著しく難化したことです。TI分類でA1 (英検3級程度)の単語の占める割合は、平成元年では7割程度でした。これが平成31年には5割まで低下しています。米国大学一般教養課程で用いられる生物学の教科書を見ると、A1レベルの単語が占める割合は概ね45%であり、東大入試の英文は、米国大学大学教科書や一般向け書籍と大差ない難易度になっていると言えます。

早稲田大学政治経済学部

平成元年(1989) vs. 平成31年 (2019)

大学入試英語が難化したのは東大だけではありません。難関私学の代表格である早稲田大学も慶應義塾大学も、入試英語は著しく難化しています。
試験(年度) 早稲田大学政治経済学部(1989) 早稲田大学政治経済学部(2019)
試験時間 90分 90分
欄外 12.1% 9.0%
C2 0.8% 1.1%
C1 1.0% 1.9%
B2 6.1% 7.3%
B1 8.8% 12.5%
A2 13.0% 13.1%
A1 58.2% 55.1%
A 1 – B2 累積比率 86.1% 87.9%
総単語数 1,601 5,047
試験時間1分あたり語数 17.8 56.1
注: テキスト・インスペクターによる分類

早稲田大学政治経済学部で出題される語数は3倍以上にまで増加しています。難易度に大きな変化はありませんが、それでも以前であれば一分間あたり20語を下回る数の単語を処理できればよかったものが、最近の出題では、60語に迫っています。
問題の指示も全て英語です。以前であれば英作文はカッコ穴埋め、部分英訳だったものが、最近の早稲田政経の出題では本格的なパラグラフ・ライティングが課されています。英文法の知識を問うものではなく、英語を書くことが出来るかどうか、運用能力の有無を直接試す問題が増えています。

センター試験と共通一次試験

平成元年は共通一次試験が実施された最後の年でした。一方、平成31年はセンター試験の最終実施年となります。偶然ではありますが、平成最初の年と最後の年に、国立大学一次試験の方式が改められています。平成元年の共通一次と31年のセンター試験を比較した場合、語数は2.2倍に増えています。リスニングの放送回数を無視して集計していますので、単純な比較は出来ませんが、明らかに分量が増加しました。

共通一次試験もセンター試験も、学習指導要領から著しく乖離しないように慎重な出題が行われているため、語彙の難易度に大きな変化はありません。それでも、分量が増えたことによって難化したと言えます。

試験(年度) 共通一次試験(1989) センター試験(2019)
試験時間 100分 30分 (Listening)
80分 (筆記)
CEFR欄外 5.1% 8.6%
C2 0.5% 0.3%
C1 0.7% 0.5%
B2 4.5% 5.0%
B1 8.9% 8.6%
A2 13.1% 13.8%
A1 67.3% 63.2%
総単語数 2,732 6,026
A 1 – B2 累積比率 93.7% 90.6%
試験時間1分あたり語数 27.3 60.9 (Listening)
52.5 (筆記)
注: テキスト・インスペクターによる分類

学校教科書に大きな変化なし

大学入試英語が難化する中で、大きな問題として捉えなければならないのは、学校で教わる英語の水準は必ずしも比例する形で難しくはなっていないということです。
主として公立中学校で採用される検定教科書で、マーケット・リーダーとされるものは New Horizon (東京書籍)、 Sunshine (開隆堂)、New Crown (三省堂)の三種類です。このうち、New Crown 本文で使用される語彙が、この30年でどのように変化してきたか検討してみましょう。

中学1年生英語教科書: New Crown

試験 (年度) New Crown 1 (1989) New Crown 1 (2019)
欄外 14.5% 17.8%
C2 0.1% 0.0%
C1 0.1% 0.0%
B2 0.7% 1.3%
B1 0.5% 1.5%
A2 5.2% 9.3%
A1 79.0% 70.1%
A 1 – B2 累積比率 85.4% 82.2%
総単語数 1,663 2,077
注: 2019年版では Further Reading 箇所を除外した本文のみのテキストを対象とする。

中学2年生英語教科書: New Crown

試験 (年度) New Crown 2 (1989) New Crown 2 (2019)
欄外 8.4% 13.5%
C2 0.1% 0.5%
C1 0.2% 0.2%
B2 1.9% 2.1%
B1 3.4% 5.0%
A2 11.2% 10.6%
A1 74.6% 68.2%
A 1 – B2 累積比率 91.1% 85.9%
総単語数 2,674 3,312
注: 2019年版では Further Reading 箇所を除外した本文のみのテキストを対象とする。

中学3年生英語教科書: New Crown

試験(年度) New Crown 3 (1989) New Crown 3 (2019)
欄外 10.7% 10.4%
C2 0.3% 0.1%
C1 0.3% 0.3%
B2 2.5% 2.6%
B1 4.7% 5.0%
A2 10.8% 11.8%
A1 70.7% 69.8%
A 1 – B2 累積比率 88.7% 89.2%
総単語数 3,138 4,680
注: 2019年版では Further Reading 箇所を除外した本文のみのテキストを対象とする。

この30年間で、中1、中2教科書本文の分量は2割増加し、中3教科書の分量は5割増加しました。中1、中2は語彙の難易度も上昇した一方、中3教科書は難易度はそのまま、量だけ増えた印象です。学校で教わる英語が簡単なまま、入試だけが難しくなった場合、何が起こるでしょうか?受験を真剣に考える生徒や保護者ほど、校外学習機関、つまり塾や予備校に受験対策を頼り、しかもこれが入学試験の合否に直結するようになってしまうということです。当然ながら、私どもとしては、生徒の英語力をいかに上達させるか、試験での得点力をいかに向上させるか、知恵を絞って誠心誠意の指導を継続しますので、違いが生じて当然と言えます。

ただし、この動きを放置した場合、教育機会格差を増大させ、社会全体では様々な望ましくない結果につながる可能性があります。例えば中学1年生が J PREP で ES150 を受講した場合、生徒の80%が英検準2級 (高校初級程度) の英語力に到達します。中学校で3年間かけて習う英語は、実は J PREPで1年以内に十分に習得できる水準にも満たないのです。J PREPで大学受験まで英語を学んだ場合、事前の海外在住経験や学習経験がなくても、多くの生徒が中3で英検準1級の水準に到達し、高校2年生でTOEFL で100点を超えることも十分に可能です。効率的な練習メニューで、しかも生徒本人が努力すれば、読み、書き、話す、聴く、いずれのスキルも英語で大学教育を受けるために必要にして十分な水準に到達できます。しかしながら大変に残念なことに、正規教育の場である学校で、このような水準の英語教育を提供しているところはほとんど存在しません。

私どもは自ら指導する生徒はもちろんのこと、日本全国の英語教育水準を向上させるためにも積極的に役割を果たしていきます。本格的なスピーキング指導、批判的読解力の涵養も含め、英語教育の世界で指導法モデルを確立する存在であり続けたいと考えています。

J PREP 代表 斉藤 淳